【特別支援教育】アセスメントから「選択支援」へ
〜本人の自己理解を育むこれからの支援とは〜
特別支援教育では、従来からアセスメントを重視した教育支援が行われてきました。しかし近年の国の資料や自治体の研修では、「アセスメントだけで終わらせない」「選択支援へつなぐ」という考え方が強調されるようになっています。
本記事では、その背景と具体的な支援のポイントをわかりやすくまとめます。
1. アセスメントから選択支援へ移行した背景
近年の政策資料(厚生労働省・自治体の就労支援部会など)では、次のような課題が指摘されています。
■ アセスメント中心の支援では“本人の選択”が弱い
従来のアセスメントは、
- 本人の得意・不得意
- 発達段階
- 行動傾向
- 支援ニーズ
などを整理する点で非常に重要でした。
しかし、支援者が情報を“評価する”段階で止まってしまい
本人が自分の進路や将来像を主体的に選ぶ場面が少なかった
という課題がありました。
■ 「自分で選べる力」が社会生活に直結する時代に
高等部卒業後の就労支援の現場では、
「自分の希望を説明できる力」
「自分に合う働き方を判断する力」
の重要性がますます大きくなっています。
また、札幌市を含む自治体資料でも、
“選択の連続”の中で自己理解を深めていく支援が不可欠
と示されています。
■ 本人の“納得感”が定着に影響
進路選択を支援者主導で決めた場合、就職後に「ミスマッチ」が生まれ、早期離職につながる例が多いことも報告されています。
逆に、本人が選んだ選択肢は、困難場面でも粘り強く取り組める傾向があります。
2. 選択支援の概要
ここでいう「選択支援」とは、
本人が“自分で決める力”を育てるプロセス
を中心に据えた支援のことです。
■ 実際の学校現場での活用例
- 見学旅行のテーマ選び
- 職場体験先の選択
- 作業学習のグループ選択
- 清掃場所の選択
- 卒業後の働き方モデルの比較
小さな選択の積み重ねが、本人の「自分で判断する力」につながります。
3. 選択支援のメリットとデメリット
■ メリット
● 本人の主体性が育つ
自分で決めたことは、取り組みへの意欲が高まります。
● 進路のミスマッチが減る
働く場面で「自分で選んだ仕事」という納得感が生まれます。
● 自己理解が深まる
選ぶ過程で、自分の特性や好み、向き不向きが自然と整理されていきます。
● 保護者の納得にもつながる
本人が意思を示すことで、支援の根拠が明確になりやすくなります。
■ デメリット・留意点
● 選択肢の提示が難しい
知的障害・発達障害の特性により、抽象的な比較が難しいケースがあります。
→ 対策:
- 画像や動画で見える化
- 実際に体験させる
- 2択から始める など
● 間違った選択をすることもある
一見“選べているようで選べていない”こともあります。
→ 対策:
- 選択理由を丁寧に聞く
- 「経験の有無」「安心感」で選んでいることもあるため注意
- 困難が生じた時に支援者が伴走してふり返りを行う
● 時間がかかる
急いで進路を決めたい場面では、選択支援は手間に感じることもあります。
しかし長期的には、本人の納得感が高く、結果的に支援の負担も軽減します。
4. 選択支援の中心にある「本人の自己理解」
選択支援の核となるのは、**“本人が自分自身を理解するプロセス”**です。
■ 自己理解の主要なポイント
● 得意・不得意の理解
例:
- 立ち仕事は得意だが、細かい作業は疲れやすい。
- 一人作業の方が集中できる。
● 感覚特性の理解
- 音が苦手
- 匂いが気になりやすい
- 手先の動きにムラがある
これらは職種選択に直結します。
● 働く価値観の整理
- 人の役に立ちたい
- 体を動かしたい
- 毎日決まった仕事が安心
- 新しいことを覚えたい
【自己理解】
├ 得意・苦手
├ 感覚特性
├ 興味・関心
├ 価値観(何を大切にしたいか)
└ 働き方のイメージ
5. まとめ 〜アセスメントで終わらせず、「選択」へつなぐ〜
アセスメントは大切です。しかし、本当に重要なのは、
アセスメント → 自己理解 → 選択 → 経験 → ふり返り
とつながる循環をつくることです。
選択支援は、特別支援教育における「進路支援の新しい軸」になっています。
本人の自己理解を深め、主体的な進路選択を支えることは、将来の安定した就労にも直結します。
学校・家庭・福祉・企業が連携し、
“本人が納得して選ぶ未来”を支える教育
を一緒に築いていければと思います。
以下に札幌市の就労選択支援の概要と支給決定の方向性について、詳細をご覧ください。


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