― 高等支援学校から地域・社会へつなぐスポーツのかたち ―
Ⅰ.アダプテッドスポーツとは何か
近年、「インクルーシブ」という言葉を教育現場で耳にする機会が増えてきました。スポーツの世界でも同様です。その中心にある考え方の一つが「アダプテッドスポーツ」です。
アダプテッド(adapted)とは、「調整された」「適応された」という意味です。つまり、障がいのある人に無理に合わせさせるのではなく、環境・ルール・用具・関わり方を調整することで、誰もが参加できるようにするスポーツのことです。
例えば――
・ボールを大きくする
・ネットを低くする
・ルールを簡略化する
・役割を細分化する
これは「できないから特別扱いする」という発想ではありません。
一人ひとりの強みを活かすための“設計”です。
知的障がいのある生徒が取り組んでいる種目は多岐にわたります。
バスケットボール、フットサル、Tボール、リレーマラソン、スキー競技など、高等支援学校でも実践されています。
重要なのは、「できる・できない」で分けるのではなく、
“どうすればできるか”を考える姿勢です。
アダプテッドスポーツは、単なる支援技術ではなく、
多様性を前提とした社会づくりの視点そのものなのです。
Ⅱ.大会・交流会の役割 〜参加型から競技型へ〜
高等支援学校では、多くの生徒が大会や交流会に参加しています。そこには大きく二つの意味があります。
1.参加型の大会(入口)
・地域交流大会
・体験会
・レクリエーション大会
目的は「楽しむこと」「成功体験」「社会参加」です。
勝敗よりも“参加すること”に価値を置きます。
この段階では、心理的安全性が最優先です。
「楽しかった」「またやりたい」と思える経験が土台になります。
2.競技型の大会(挑戦)
一方で、競技性を高める大会もあります。
代表的なものに
があります。
また、知的障がいのある方の国際的なスポーツ活動として
の取り組みも広がっています。
競技型の大会は、「自己実現」や「自己効力感の向上」に大きな意味を持ちます。
ここで大切なのは、
参加型と競技型を対立させないことです。
参加 → 継続 → 挑戦
という段階設計があることで、生徒は成長の道筋を描けます。
そしてその先に、
大人のバスケットボールチームや草野球チームなど、地域のスポーツクラブへの参加という未来も見えてきます。
スポーツを“学校で終わらせない”こと。
これが今後の重要な視点です。
Ⅲ.国の施策と地方での実践例
国も、学校スポーツを地域へつなぐ取り組みを進めています。
スポーツ庁は、特別支援学校の部活動を地域へ移行する事業を展開しています。
「学校での活動を、卒業後も地域で継続できる仕組みづくり」が政策課題になっています。
これは単なる部活動改革ではありません。
生涯スポーツへの接続です。
地方でも実践例は増えています。
・地域クラブと特別支援学校の連携
・障がいのあるなし混合のユニファイドチーム
・自治体主催の交流リーグ
・段階的なリーグ制度の導入
例えば、
初心者リーグ(体験中心)
↓
交流リーグ(混合チーム)
↓
チャレンジリーグ(競技志向)
といった構造をつくることで、
誰もが自分のレベルに合った参加が可能になります。
これは「特別扱い」ではありません。
選択肢を増やすことです。
Ⅳ.まとめ 〜インクルーシブなスポーツ環境を目指して〜
インクルーシブという視点に立つとき、
「障がいのある人だけの大会をつくる」ことが最終目標ではありません。
目指すのは、
・障がいのあるなしに関係なくチームを組むこと
・それぞれの長所を発揮できること
・弱点を補い合えること
つまり、
違いを前提としたチームづくりです。
スポーツには、
する
みる
ささえる
という三つの関わり方があります。
選手としてプレーする人
応援する人
運営を支える人
誰もが役割を持てる環境づくりこそ、真のインクルーシブ社会の姿ではないでしょうか。
そのためには、
単発の大会ではなく、
継続的なリーグ設計が必要です。
参加型から競技型へ。
学校から地域へ。
若者から大人へ。
スポーツが人生をつなぐ“架け橋”になる。
高等支援学校での実践は、その第一歩です。
これから求められるのは、
「できる人がやるスポーツ」ではなく、
**“みんなでつくるスポーツ”**です。
そしてその先に、
誰もが自分らしく輝ける社会があると信じています。
↓アダプテッドをやってみよう!
https://www.mext.go.jp/sports/content/20220510-spt_kensport01-000022439_3_3.pdf

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