不登校の子どもたち〜光が見えたきっかけ〜

👤 Aさんのプロフィール(小学校からの不登校)

 

Aさんは、小学校低学年の頃から登校が難しい状況が続いていました。朝は早く起きることができるが、学校や教室という空間そのものに対する強い緊張感や拒否感も背景にあるように感じられました。

🖼️ 秘めたる才能:「絵を描くこと」

 

Aさんが好きなことは絵を描くことです。家の中も好きな絵やキャラクターで囲まれていました。また、保健室登校できたときも端の方で、絵を書いていました。その作品をポストカードにしたり、学校の装飾物にさせてもらったこともありました。

  • コミュニケーションの手段:普段、私たち教師との会話は極端に少なく、こちらからの問いかけに対しても、返ってくる言葉はいつも単語や短いフレーズばかりでした。抑うつ傾向であり、どこか表情は冷たい感じが多かったかもしれません。

🧐 私たちが気づいたAさんの特性

 

会話では多くを語らないAさんでしたが、接する中で私たち教員が強く感じたのは、彼の**「人を感じる能力」の鋭さ**でした。

  • 過敏な感覚:Aさんは、私たちが考える以上に周囲の環境や人の感情の動きを敏感に察知し、過剰に情報を受け取っているようでした。

  • 「見えないもの」を感じる力:場の空気、言葉の裏にある感情、相手のちょっとした表情の変化など、普通なら見過ごしてしまうような微細なサインをキャッチする能力に長けているのです。これは、日常生活や集団生活において、我々が想像する以上の精神的な疲労をもたらしている可能性が高いと感じました。

【私たちが学んだこと】 Aさんが「学校に入ること」に強い緊張感を覚えるのは、大勢の人が集まる学校という環境の持つ多様な感情や情報を受け止めきれず、脳がオーバーヒートしてしまう可能性もあるのではないか。

🚀 私たちがAさんに行った具体的なアプローチ

 

Aさんのような繊細な特性を持つ生徒への支援は、**「小さな一歩」**の積み重ねが不可欠でした。私たちは以下の5つの柱で支援を展開しました。

1. 🤝 信頼関係を築くための「会う回数を増やす」

 

最も重要だったのは、Aさんとの信頼関係の構築です。

  • 段階的な接触:最初は家庭訪問をしても会ってもらえないことが続きましたが、焦らず訪問を継続しました。段階を経て、玄関先で短く言葉を交わせるようになり、最終的には保護者の方のサポートもあり、家の中でゆっくり話せるように変わっていきました。

  • 「外」の情報の橋渡し:会う機会を増やしたことで、学校の様子やクラスメイトの手紙を直接手渡し、Aさんを孤立させないように努めました。これは、Aさんにとって「学校とのつながり」を実感してもらう大切な手段となりました。

2. 🗓️ 段階的な目標設定と調整

 

Aさんが最も苦手とする**「学校という空間」**に慣れてもらうため、環境を徹底的に調整しました。

  • 人との接触を最小限に:最初は放課後や長期休みといった、人が少ない時間帯を利用して学校に来る日程を調整しました。

  • 安心できる導入:来校前には必ず電話で事前連絡を入れたり、学校の手前の場所で待ち合わせをしたりするなど、急な環境変化による緊張を和らげる工夫をしました。

  • 内発的な変化:大きな変化が見られたのは、クラスの仲間と話したい、学校行事に参加したいというAさん自身の内側から湧き出た気持ちや、卒業が近づき進路で周りが動き出したことへの焦燥感からでした。Aさんは自分だけ取り残されたくないという思いで涙を流し、ここから徐々に登校への意欲を見せ始めました。

3. 🌱 急に無理をさせない「小さなステップ」

 

Aさんの過敏な特性を理解し、**「できることから始める」**という姿勢を徹底しました。少しでも頑張れたら褒め、昨日の自分より一歩進んだことを評価する、小さな成功体験を積み重ねることを意識しました。

4. 👨‍👩‍👧‍👦 保護者とチームでのアプローチ

 

教員だけで抱え込むのではなく、専門家や保護者とチームで支援を行いました。

  • 第三者の視点:地域の相談室の方に家庭訪問に同行してもらうなど、第三者の視点からの客観的なアプローチや、支援のヒントを得るための**アセスメント(評価)**の機会を設けました。

  • 保護者の方との連携:保護者の方の深い理解と、日々の温かい後押しが、Aさんの変化を支える最大の力となりました。

5. ❤️ 教員としての心構え:アセスメントの徹底

 

この事例から、教員として最も重要だと痛感した心構えがあります。

心構え 他のクラスの児童生徒もいるため、他の先生へ協力を依頼する。できるところから一つずつチャレンジする。
背景の理解 不登校の背景や本人の特性を丁寧にアセスメントし、表面的に見える部分だけで安易に判断しない。Aさんのように「繊細さ」が困難さにつながっている場合もある。
チーム支援 担任や学年団だけで一人で抱え込まない。校内チーム(管理職、学年、養護教諭)や校外の専門機関(医療、福祉機関、専門家等)と連携し、多角的なアプローチを行う。

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